オバマ大統領の任期もきょう2017年1月19日まで。あたらしい人間にかわるまえに2016年5月27日の広島演説を記録しとく。
- 中日新聞:オバマ大統領の広島演説|2016/5/28
- オバマアメリカ大統領は2016年5月27日、アメリカの現職大統領として初めて、第2次大戦末期に原子爆弾が投下された広島市の平和記念公園を訪れた。被爆者らが見守る中、原爆死没者慰霊碑に献花し「私の国のように核を保有する国々は恐怖の論理から逃れ、核兵器のない世界を追求する勇気を持たなければならない」と演説。安倍晋三総理大臣も所感の中で核廃絶の決意を示し、日本とアメリカが歩調をそろえた。その后、オバマ氏は被爆者と長い握手を交わし、肩を抱き合った。
- 広島に到着したオバマ氏は、安倍総理大臣とともに慰霊碑に花をささげ、約17分間の演説を行った。
- オバマ氏は「71年前、雲一つない明るい朝、空から死が落ちてきて、世界は変わった。閃光(せんこう)と炎の壁は都市を破壊し、人類が自らを破壊するすべを手に入れたことを実証した」と切り出し、第2次大戦の全ての犠牲者を追悼するため広島を訪れたと説明した。
- その上で「いつか証言する被爆者たちの声は聞けなくなる。それでも1945年8月6日朝の記憶は風化させてはならない」と力を込め「広島と長崎は核戦争の夜明けとしてではなく、道徳的な目覚めの始まりとして知られるだろう」と演説を結んだ。原爆投下の是非には踏み込まず、謝罪はしなかった。
- 以下オバマ大統領の演説
71年前、雲一つない明るい朝、空から死が落ちてきて、世界は変わった。閃光(せんこう)と炎の壁は都市を破壊し、人類が自らを破壊するすべを手に入れたことを実証した。 - なぜわれわれはこの地、広島に来るのか。それほど遠くない過去に解き放たれた恐ろしい力について考えるためだ。10万人を超える日本の男性、女性、子どもたち、多くの朝鮮半島出身者、そして捕虜となっていた十数人のアメリカ人を含む犠牲者を追悼するためだ。
- 彼らの魂はわれわれに語りかける。彼らはわれわれに対し、自分の今ある姿と、これからなるであろう姿を見極めるため、心の内に目を向けるよう訴えかける。
- 広島を際立たせているのは、戦争という事実ではない。(歴史的)遺物は、暴力による争いは最初の人類とともに現れたということをわれわれに教えてくれる。初期の人類は、石片から刃物を作り、木からやりを作る方法を取得し、これらの道具を、狩りだけでなく同じ人類に対しても使うようになった。
- 穀物不足や黄金への渇望に駆り立てられようと、民族主義者の熱意や宗教上の熱情にせき立てられようと、いずれの大陸も文明の歴史は戦争であふれている。帝国は盛衰し、民族は支配下に置かれたり解放されたりしてきたが、節目節目で苦しんできたのは罪のない人々だった。犠牲者は数え切れないほどで、彼らの名前は時とともに忘れ去られてきた。
- 広島と長崎で残酷な終焉(しゅうえん)を迎えた世界大戦は、最も豊かで強い国家の間で起きた。彼らの文明は偉大な都市と素晴らしい芸術をもたらしていた。思想家は正義と調和、真実という理念を前進させていた。しかし、戦争は、初期の部族間で争いを引き起こしてきたのと同じ支配・征服の基本的本能によって生まれてきた。新たな抑制を伴わない新たな能力が、昔からの(支配・征服の)パターンを増幅させた。
- 数年の間で約6,000万人が死んでしまった。われわれと変わることのない男性、女性、子どもが撃たれたり、打ちのめされたり、行進されられたり、爆弾を落とされたり、投獄されたり、飢えたり、毒ガスを使われたりし、死んだ。
- 世界各地には、勇気や勇敢な行動を伝える記念碑や、言うに堪えない卑劣な行為を反映する墓や空っぽの収容所など、この戦争を記録する場所が多く存在する。
- しかし、この空に上がったきのこ雲のイメージが、われわれに人類の非常に根本的な矛盾を想起させた。われわれを人類たらしめる能力、思想、想像、言語、道具づくりや、自然と区別する能力、自然を意志に屈させる能力、これらのものが比類ない破壊の能力をわれわれにもたらした。
- 物質的な進歩や、社会の革新がこの真実からわれわれの目をくらませることがどれほど多いことか。気高い名目のため暴力を正当化することはどれほど容易か。
- 偉大な全ての宗教は愛や平和、公正な道を約束している。一方で、どの宗教もその名の下に殺人が許されると主張するような信者を抱えることは避けられない。
- 国家は、犠牲と協力を結び付けるストーリーを語りながら発展してきた。さまざまな偉業を生んだが、このストーリーが抑圧や相違を持つ人々の人間性を奪うことにも使われてきた。科学はわれわれに海を越えて意思疎通することを可能にし、雲の上を飛び、病気を治し、宇宙を理解することを可能にした。しかし同じ発見は、より効率的な殺人機械へと変えうる。
- 現代の戦争はこの真実をわれわれに教える。広島はこの真実を教える。技術の進歩は、人間社会が同様に進歩しなければ、われわれを破滅に追い込む可能性がある。原子の分裂につながる科学の革命は、道徳的な革命も求めている。
- だからこそ、われわれはこの場所に来た。われわれはこの都市の中心に立ち、爆弾が落ちた瞬間を自ら想起し、目の前の光景に困惑する子どもの恐怖を自ら感じる。
- われわれは静かな叫びを聞く。われわれはあの恐ろしい戦争やその前の戦争、その後に起きた戦争で殺された全ての罪なき人々に思いをはせる。
- 単なる言葉でその苦しみを表すことはできない。しかしわれわれは歴史を直視し、そのような苦しみを繰り返さないために何をしなければならないかを問う共通の責任がある。
- いつか証言する被爆者たちの声は聞けなくなる。それでも1945年8月6日の朝の記憶を風化させてはならない。その記憶はわれわれを安心感に浸らせることを許さない。われわれの道義的な想像力の糧となり、われわれに変化をもたらしてくれる。
- あの運命の日からわれわれは希望をもたらす選択もしてきた。アメリカと日本は同盟関係を築くだけでなく、戦争を通じて得られるものよりもずっと多くのものを国民にもたらす友情を築いた。
- ヨーロッパの国々は戦場に代わり交易や民主主義による結び付きを築いた。抑圧された人々や国々は自由を勝ち取った。国際社会は戦争を回避し、核兵器の存在を規制、縮小し、完全に廃絶するための機関を創設し協定を結んだ。
- それでも、世界中で見られる国家間の侵略行為、テロや腐敗、残虐行為や抑圧は、われわれのなすべきことには終わりがないことを示している。人類の悪行を働く能力を撲滅することはできないかもしれないので、国々やわれわれが築いた同盟が自らを守る手段を持たなければならない。
- 私の国のように核を貯蔵している国々は、恐怖の論理から逃れ、核兵器のない世界を追求する勇気を持たなければならない。私が生きているうちにこの目標は達成できないかもしれないが、たゆまぬ努力が大惨事の可能性を小さくする。
- われわれはこうした貯蔵核兵器の廃棄に導く針路を描くことができる。われわれは核兵器が新たな国に拡散することを防ぎ、狂信者に死の物質が渡らないよう守ることができる。しかし、それだけでは十分ではない。なぜなら、われわれは今日、世界中で、粗雑な銃や「たる爆弾」でさえ恐るべき規模の暴力をもたらすことができることを、目の当たりにしているからだ。
- われわれは戦争そのものについての考えを改めなければならない。外交によって紛争を防ぎ、始まってしまった紛争を終える努力をするために。増大していくわれわれの相互依存関係を、暴力的な競争でなく、平和的な協力の理由として理解するために。破壊する能力によってではなく、築くものによってわれわれの国家を定義するために。そして何よりも、われわれは一つの人類として、お互いの関係をもう一度想像しなければならない。このことがまた、われわれ人類をユニークなものにするのだ。
- われわれは過去の過ちを繰り返す遺伝子によって縛られてはいない。われわれは学ぶことができる。われわれは選択することができる。われわれは子どもたちに異なる話をすることができ、それは共通の人間性を描き出すことであり、戦争を今より少なくなるようにすること、残酷さを簡単に受け入れることを今よりも少なくすることである。
- われわれはこれらの話を被爆者の中に見ることができる。ある女性は、飛行機を飛ばし原爆を投下した操縦士を許した。本当に憎むべきなのは戦争そのものであると気付いたからだ。ある男性は、ここで死亡したアメリカ人の家族を探し出した。その家族の失ったものは、自分自身が失ったものと同じだと気付いたからだ。
- 私の国は単純な言葉で始まった。すなわち、人類は全て、創造主によって平等につくられ*1、生きること、自由、そして幸福を追求することを含む、奪うことのできない権利を与えられている。
- 理想(を実現すること)は、自分たちの国境の内においてさえ、自国の市民の間においてさえ、決して簡単ではない。しかし(理想に)忠実であることは、努力する価値がある。追求すべき理想であり、大陸と海をまたぐ理想だ。
- 全ての人のかけがえのない価値、全ての命が貴重であるという主張、われわれは人類という一つの家族の仲間であるという根源的で必要な考え。われわれはこれら全てを伝えなければならない。
- だからこそ、われわれは広島に来たのだ。われわれが愛する人々のことを考えられるように。子どもたちの朝一番の笑顔のことを考えられるように。台所のテーブル越しに、妻や夫と優しく触れ合うことを考えられるように。父や母が心地よく抱き締めてくれることを考えられるように。
- われわれがこうしたことを考えるとき71年前にもここで同じように貴重な時間があったことを思い起こすことができる。亡くなった人々はわれわれと同じだ。
- 普通の人々はこれを理解すると私は思う。彼らは、戦争はこりごりだと考えている。彼らは、科学は生活をより良くすることに集中するべきで、生活を台無しにすることに集中してはならないと考えるだろう。
- 各国の選択が、あるいは指導者たちの選択がこの簡単な分別を反映すれば、広島の教訓は生かされる。
- 世界はここで永遠に変わってしまったが、今日、この都市の子どもたちは平和の中で日々を生きていくだろう。なんと貴重なことだろうか。そのことは守る価値があり、そして全ての子どもたちに広げる価値がある。
- それは私たちが選ぶことのできる未来だ。その未来では、広島と長崎は核戦争の夜明けとしてではなく、道徳的な目覚めの始まりとして知られるだろう。
(さんこう)
- 長崎新聞ホームページ:【県内トピックス】オバマ大統領のおりづる来崎(2017年1月7日)
- 長崎市は2017年1月6日、田上富久市長がにほんにあるアメリカ大使館を訪れ、オバマアメリカ大統領が昨年2016年5月の広島訪問直前に作った折り鶴2羽をケネディにほん駐在アメリカ大使から寄贈されたと発表した。長崎市は2017年1月7日から2017年3月末まで同市平野町の長崎原爆資料館に展示する。
- 長崎市によると、折り鶴は赤色と桃色の和柄で、オバマ氏が現職のアメリカ大統領として初めて被爆地広島を訪れる前、もう一つの被爆地である長崎を思い作ったという。ケネディ氏が2016年11月にホワイトハウスでオバマ氏と面談した際、折り鶴を預かっていた。ケネディ氏は「サプライズ」と笑顔で田上富久市長に手渡したという。
- 折り鶴にはオバマ氏のメッセージも添えられ「私たちは核兵器のない世界に向けて力を合わせていかねばならない」と呼び掛けている。田上富久市長はオバマ氏が長崎を訪れ被爆者や若者と交流してほしいとケネディ氏に要望した。
- 長崎市にはにほんにあるアメリカ大使館から新年のあいさつ状が届いており、オバマ、ケネディ両氏が、今回寄贈されたものとは別の折り鶴を作る写真が掲載されていた。長崎市はメッセージとあいさつ状も原爆資料館に展示する。田上富久市長は「平和を願う長崎市民がいただいた折り鶴。サプライズという気持ちがうれしい」と話した。
(画像=にほんにあるアメリカ大使館から長崎市へおくられたオバマアメリカ大統領のおりづるとメッセージ。てまえはオバマ氏がべつのおりづるをつくるようすをさつえいした新年のあいさつ状=長崎原爆資料館)
- 長崎市は2017年1月6日、田上富久市長がにほんにあるアメリカ大使館を訪れ、オバマアメリカ大統領が昨年2016年5月の広島訪問直前に作った折り鶴2羽をケネディにほん駐在アメリカ大使から寄贈されたと発表した。長崎市は2017年1月7日から2017年3月末まで同市平野町の長崎原爆資料館に展示する。
- オバマ氏のおりづる、長崎へ - 広島訪問記念 - アメリカ大使館が寄贈 [長崎県] - 西日本新聞|2017年01月07日06時00分
- オバマアメリカ大統領が昨年2016年5月、被爆地・広島訪問に合わせて作った折り鶴2羽が2017年1月6日、長崎市に贈られた。長崎市によると、オバマ氏は広島市側にも折り鶴とメッセージを贈っていたが、長崎市にも贈りたいとの提案があったという。
- この日、東京のアメリカ大使館を訪れた田上富久市長が、ケネディにほん駐在大使から市長宛てのメッセージとともに手渡された。折り鶴と声明は長崎原爆資料館で2017年1月7日から展示される。
- 声明では「核兵器のない世界の構築に向けて皆様が払われているご尽力に感謝申し上げます」とした上で、にほんとアメリカの両国が「核兵器のない世界に向けて力を合わせていかねばなりません」と記している。田上富久市長は「友好と平和の思いに応えてもらえた。うれしい限りだ」と話した。
- オバマ氏、長崎にもおりづる…原爆資料館で展示:社会:読売新聞|2017年01月07日18時05分
- 長崎市は2017年1月6日、オバマアメリカ大統領から自作の折り鶴2羽を贈られたと発表した。
- オバマ氏が昨年2016年5月の広島訪問に合わせて折っていたもので、田上富久(たうえとみひさ)市長が同日*2、にほんにあるアメリカ大使館でケネディにほん駐在大使から受け取った。2017年1月7日から2017年3月31日まで、長崎市の長崎原爆資料館で展示する。
- 長崎市平和推進課によると、折り鶴は、昨年2016年11月にオバマ氏と面会したケネディ氏が、長崎市に贈りたいとの意向を受けて預かっていた。オバマ氏は広島訪問の際に4羽を広島市に贈り、残りを手元に保管していたという。
- 折り鶴と一緒に、田上富久市長と資料館へのオバマ氏からのメッセージも渡された。資料館宛てには「私たち両国は他の多くの国々と共に、核兵器のない世界に向けて力を合わせていかなければいけない」と記されている。
(画像=オバマアメリカ大統領から長崎市におくられたおりづるとメッセージ(ひだりは市長、みぎは資料館あて、長崎市提供))
- アメリカの政府高官がはじめて広島、長崎の式典に - あきひこのいいたいほうだい|2015/08/05
- 戦后70年、はじめて原爆をおとしたがわであるアメリカの政府高官が広島、長崎の式典に参加するげな。いいことだっておもうよ。
- オバマ、ノーベル平和賞 きまる - あきひこのいいたいほうだい|2009/10/10
- 正義の ために がんばれ、オバマ! (あめーば) - あきひこのいいたいほうだい|2009/09/08
- ことし 4月の プラハ 演説で、「核 兵器を 使用した ゆいつの 核 保有国と して、行動する 道徳的 責任が ある」と 言明したが、アメリカ 大統領が 原爆 投下の 責任に 言及するのは きわめて 異例で ある。
- 三宅一生さん、オバマ 大統領に 広島 訪問を よびかけ (あめーば) - あきひこのいいたいほうだい|2009/07/15