明日海りおさん、めちゃめちゃいい。きょうもあさドラにくぎづけだ。
(さんこう)
- 明日海りお、『おちょやん』ではなつただものではないオーラ「ザ・女優」をどうみせる?|Real Sound|リアルサウンド映画部(文=上村由紀子さん)
- 謎に包まれた女優、高峰ルリ子(明日海りお)とは一体どんな人物なのだろうか。
- 連続テレビ小説『おちょやん』(NHK総合)で、京都からふたたび道頓堀に戻った千代(杉咲花)を待ち受けていたのは、またもや一癖ある役者たち。鶴亀・大山社長の肝いりで新設された劇団に集められた旧・天海一座や歌舞伎、新派、歌劇団出身の俳優陣はまったくまとまる気配がない。脚本担当の一平(成田凌)は、彼らを使って新たな喜劇を上演しようとするものの、そう簡単にはいかないようでーー。
- そんなクセが強すぎる面々の中で、鮮烈な印象を残しとるのが高峰ルリ子だ。撮影所での活躍を旧知のメンバーから褒められた千代に対し、わざと聞こえるように「映画、映画、映画……あんなものはお芝居とは違いますわねえ」と、たおやかな毒を吐いたあの人である。
- どうやらルリ子は東京新派の名門・花菱団で活躍した元トップ女優らしい。言われてみれば白地の着物をしゃんと着こなし、背筋を伸ばして正座する姿から、ただ者ではないオーラが漂ってくる。
- 第9週「絶対笑かしたる」では、3話のみトータル3分未満の出演だったルリ子だが、斜め45度でカメラを見据える眼力とその美貌に「あの人は誰?」とネットをザワつかせとった。本格登場は第10週「役者辞めたらあかん!」からになるとのこと。ここでは今后の活躍に期待しつつ、高峰ルリ子役・明日海りおについて書いていきたい。
- 白地の着物に日本髪の姿からは想像できんかもしれんが、明日海は宝塚歌劇団の元男役トップスター。花組でのトップ在任期間は5年半で、平成以降のトップとしては歴代3位となる。代表作は『エリザベート-愛と死の輪舞-』のトートや『ベルサイユのばら-フェルゼンとマリー・アントワネット編-』のフェルゼン、『ポーの一族』エドガーなど。
- 宝塚歌劇団の花組といえば、最初に組名が記される、いわば宝塚王道の組。華やかさと実力とを兼ね備えたスターが活躍するこの花組で、明日海は長期に渡ってトップを務め、2019年に退団。退団后はディズニー映画『ムーラン』タイトルロールの吹き替えなど活動の場を広げとる。
- そんな彼女が現在挑んどるのが、ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』エドガー役。かつて宝塚のトップスター時代に演じたのと同じ役を、男女混合キャストの中で担う。相手役のアランを演じるのはミュージカル初挑戦の千葉雄大。原作漫画からそのまま抜け出してきたかのような明日海エドガーと千葉アラン、ふたりの並びは「美しい」の一言だ。
- 大人の女性が10代の少年役を演じると、体型含め無理が生じることも多いのだが、華奢な体格と中性的な雰囲気とで、明日海は永遠の時を生きる「バンパネラ」エドガー役を完璧に体現。聞けば本作で脚本・演出を担当する小池修一郎氏は、偶然出会った漫画家・萩尾望都氏に『ポーの一族』舞台化を打診し、それが実現したのがふたりの出会いから33年后の2018年。明日海りおという稀有なトップスターの存在が、あの伝説的な少女漫画を具現化させたのである。
- さて、話を『おちょやん』に戻そう。
- 明日海が本ドラマで演じる高峰ルリ子は、東京新派の名門・花菱団で活躍した元トップ女優。「元トップ」という肩書と「花菱」の「花」が本人の経歴にリンクしとるような気もしつつ、第9週の登場場面では「プライド高そう」「チームプレイ苦手そう」「舞台女優という仕事に強い自信を抱いとる」くらいしかルリ子の人物像におけるヒントが提示されとらんかった。
- 新設された「鶴亀家庭劇団」は、その名の通り、ホームドラマ的な喜劇を上演する劇団。あの孤高の存在にも見えたルリ子が、果たして喜劇に則する芝居ができるのか。
- じつは明日海、この『おちょやん』が宝塚退団后、初めて参加したドラマの現場。10代の頃からタカラヅカというある種特殊な世界で生きてきた彼女にとって、ドラマ撮影では驚いたり戸惑ったりすることも多かっただろう。そんな明日海自身の体験が、未知の世界にやってきたルリ子のキャラクター構築に深みをもたらすようにも思う。
- これまでの『おちょやん』で、千代の人生に大きな影響を与えた女優は2人。「自分の中から聞こえる声に従いなさい」と語った千代憧れの人・高城百合子(井川遥)と、千代の最初の師匠であり、今は自らの芝居を見つめ直すため、全国を渡り歩いとる山村千鳥(若村麻由美)だ。
- 第3の女優=高峰ルリ子は千代とどんな関係を築いていくのか。その名前からも一筋縄ではいかない香りが漂う中、華やかな大階段を降りてきた明日海りおが、クセの強いザ・女優をどう魅せるのか非常に気になる。
- 千代にとってのルリ子は、憧れの存在でも師匠でもない「共演者」になるはずである。そこで起きる化学反応に注目したい。
- 上村由紀子