週刊誌の記事に「軍事法廷のない自衛隊が・・・」っていう文章をみた。
軍事法廷のない自衛隊が、現地で事件、事故をおこせば外交問題に!?
国連PKO(平和維持活動)の任務が文民保護のための戦闘もともなうものとなり、ほの「げんば」と自衛隊をめぐるにほんの「国内事情」の乖離(かいり)がおおきくなってきた。
「国際法的には、自衛隊は軍隊です。ですからジュネーブ諸条約などの国際人道法の適用対象になるですけど、にほん政府はほれをみとめえってしません」って指摘するのは岩本誠吾京都産業大学教授。
「現代の戦争では、軍人が敵対勢力に拘束されたばあいでも、拷問、虐待、殺害をされんよう国際人道法で捕虜としての人道的待遇が保障されます。ところがにほんでは、安保法制の国会審議で当時の岸田文雄外務大臣は、『自衛隊は捕虜になれん』って答弁しとるです。これをみとめてしまうと憲法問題になるからでしょう。国際人道法を適用せず、捕虜になれんっていうことは、最悪のばあいは死刑となるおそれもある」
いっぽう、PKOの任務中に自衛隊員が事件、事故をおこしたさいの法の空白も外交問題となりえる。
「にほんのばあいは軍事法廷がなく、海外派遣された自衛隊員の事件、事故をさばくのは、一般の裁判所となります。故意による死亡事件は殺人罪で、刑法の国外犯の処罰規定が適用されますけど、誤射などの過失致死罪のばあいは刑法の国外犯規定がないで、現状のにほんではさばけんです」
まんがいち、誤射や事故がおきてもほの責任を追及できにゃ、現地でつよい反発をかうことは必至だ。
「改憲もふくめたPKO派遣のための法整備、制度設計をするか、あるいは批判も覚悟でいっさい海外派遣をせんか。ほうした議論もなく、派遣される自衛隊にげんば対応させるのは、まあ限界だらあ」
写真=みなみスーダンの首都ジュバでおきた大規模戦闘。自衛隊はさいわいまきこまれんですんだけど・・・。
要点はふたつ。ひとつは、「自衛隊は軍隊で国際人道法の適用対象になるのに、にほん政府が軍隊だってみとめんために適用されんで、ほりょになったばあい最悪死刑にされちゃう」ってこと。まあひとつは、「にほんには軍事法廷がないで、自衛隊員が現地で誤射とかしてもこれをさばくべき規定がない」ってこと。
うん、軍隊をもっとるのに軍隊じゃないっていいはっとるがために、自衛隊員はほりょになっても死刑にされる恐怖にさらされ、自衛隊員が現地で事件をおこしたとしてもさばかれんままになっちゃって反発をかうってことになるだ。こんな状態で放置しとっちゃいかんぞ。
伊勢崎賢治氏
東京外国語大学大学院総合国際研究院教授。2000年から国連PKO幹部として、ひがしティモール暫定行政府の県知事をつとめる。2001年からシエラレオネで国連派遣団の武装解除部長。2003年からにほん政府特別代表としてアフガニスタン武装解除をになった。紛争地での豊富な実務経験をもち、「紛争解決うけおいにん」ともよばれる。
(週刊スパ 2019年3月12日号)