こころ あらわれる 金沢だった。
ゆきに おおわれた 金沢城や 兼六園は このうえなく すがすがしく、おとずれる ものの こころまで きよらかに して くれる。
なかでも 威容を ほこるのが 五十間長屋 (ごじっけんながや)だ。りょうがわに つながる 菱櫓 (ひしやぐら)、橋爪門続櫓 (はしづめもんつづきやぐら)と ともに 2001年に 復元された ものだが、天守閣を もたぬ 金沢城に あっては 圧倒的な 存在感だ。
また、建築物だけで なく、すまう ひとびとの なかにも 加賀百万石の 歴史は つづいとる。室生犀星で 有名な 犀川 (さいがわ)の ほどちかくに、つば甚 (つばじん)と いう 料理屋が ある。前田家の とのさまたちが 郊外に あそんだ かえりみちに ここで 休憩した ことに 由来し、350年もの 歴史が ある。そして、とのさまや 八家老の 子孫が いまも ここで 会食を すると いう。
つば甚に いった。ひとしなひとしな ていねいに はこばれて くる 料理は どれも あたたかく、うすあじでは あるが こくの ある もので、「こんな うまい ものは、これまでに たべた ことが ない」と おもった。
(さんこう)