きょう、あんじょう市民ギャラリーに歴史のひろば展をみにいっただけど、いっしょに展示されとったもののなかに美智子さまのちいさな詩集があった。南吉にしたしむ会のかたたちによる展示で、美智子さまが南吉の誌を英訳し詩集とされたものだ。
こんかい展示されとったのはつぎのいつつの作品。
あさは
あさはかげがながいので、
少女のあたまが
わたしのあしもとにとどく。
あさかぜはやさしいので、
かみのひとふさが、
わたしのあしもとでうごく。
-すきな少女のあさのかげ、
わたしはそのかげをふまないで、
あさつゆの真珠にふちどらせ、
じっとみている。
〔1938年9月28日〕
落葉
わたしが烏臼(うきゅう)のしたを
ゆくと
金貨でもくれるように
きいろいはを二枚、
おとしてよこす。
さてわたしは、
この金貨で、
手套(しゅとう)をひとそろいかって、
なつかしい童話のきつねに、
もってって あげよう。
〔1938年9月28日〕
かきね
かきねも四月はまだこどもで、たけが
わたしのバンドにとどかない。
ゆくとき、わたしがはをさわると、
こどものみみのようにやわらかい。
みみをひっぱられたこどものように、
かきねはするとくすくすわらって、
かくしていた蝶をはなすのです。
あおいそらへはなすのです。
〔1939年4月15日〕
初夏抒情
むぎのほ
きばみ、
土蔵のしらかべに
まひるはまぶしい。
きみよ、きみの少年(アンファンス)をさがすなら、
しおたれた帽子をぬぎたまえ。
むぎぶえをふいて、
このみちをゆきたまえ。
〔1939年5月17日〕
いずみ
あるひふと、
いずみがわいた。
わたしのこころの
おちばのしたに。
はちがきて、
はりとぐほどの
ちいさないずみ。
しょうもなくて、
はなをうかべて
ながめていた。
〔1939年10月15日〕
美智子さまがよく「でんでんむしのかなしみ」を引用なさるっていうはなしはきいたことがあるけど、南吉のほかの詩もこうやって英訳なさるっていうのは、ほんとに南吉の誌がおすきなだね。